生成型AIーChatGPTと教育の近未来

昨年11月(2022/11)のChatGPTの一般公開に端を発して、社会では生成型AIが大きな話題になりました。教育界でも進取の気性の先生方が、果敢に取組を行い、このAIが、今後、どのような教育の場面で活用ができるのか、その可能性について日々模索が続いています。

私が、ChatGPTの最初の報道にふれた時には、教育の領域とは大きな距離感があるように感じていました。しかし、いろいろな試行を繰り返すうちに、このAIは教育にも非常に大きなインパクトをもたらすことが次第に見えてきました。

最初に私がこのAIを試した時に、日本語で「日本の首相は誰ですか?」という質問をして、ChatGPTから「日本の首相は菅義偉さんです」との答えを得ました。菅義偉さんは、現在の総理大臣より以前の方だったので、正直「使えないかな」という感想を持ちました。

しかし思い直して、この質問を「Who is the japanese prime ministrer?」と英語で尋ねてみると、「As of my last update in October 2021, the Prime Minister of Japan is Fumio Kishida. However, please check the most recent sources as political positions can change.」と、今度は正しい答えを引き出しました。英語と日本語では、どのくらい最近まで勉強をしているのかが異なっていて、確実に事実に迫ってきているAIを見て、背筋が寒くなる思いがしました。

ChatGPTを授業で利用している報道や出版物も最近ではよく見かけるようになりました。このAIを使うと「総合的な学習の時間」で子供たちが調べて書いたレポートについて、「もっとこうすれば良くなるよ」という視点から助言を行うことができます。また、一部の教科では、記述式のテスト問題の採点にも、そこそこの精度で利用できることが分かってきました。こうしたとことは、これまでのAIにはなかった大きな特徴といえます。

一人一人の文章を元に「ここをもう少し考えてみて」と伝えたり、「このことをもっと調べてみるとレポートが広がるよ」といった視点を与えてくれるAIのすごさは、実際に子供たちの書いた文章をもとにAIを動かしてみると、実感できると思います。(もし、興味があれば、子供たちの書いた文章で、個人情報が特定されないようなものをChatGptに解釈させて見て下さい。きっと驚くこと請け合いです。)

昔、日光猿軍団という人気のエンタメがありましたが、猿の演じている姿が滑稽なのは、見よう見真似で、わけもわからずに他者の行動を模倣しているところが面白いからとのことでした。ChatGPTのことを「使えないな」とあざ笑った自分は、心のどこかに「猿ぐらいであって欲しい」と願ったところがあったのかと自省しました。

ChatGPTを既に教育の現場で活用した実践の多くは、ChatGPTをチャットのまま使っているものが多いのですが、ここから1~2年経つと、本命はブラウザ上のチャットから、API関数を用いたアプリやソフトウエアの方に重点が移っていくと私は見ています。そのアプリにはChatGPTプロンプト(指示文)が使いやすいように埋め込まれていたり、問い合わせ先のAI自体、教育用にチューンアップされたものが使われている可能性があります。

ただのチャットから、アプリやソフトウエアに姿を変えて、その使途や機能が明確化・先鋭化されたツールは、きっと教育現場に加速度的に浸透することと思います。そして、その頃には「実は、これはChatGPTを使っていて…」ということはどうでもよくなって、そのツールを使ってどれだけ子供たちを伸ばすことができたか、未来に必要とされる真の学力を身につけさせる教育が展開されたかという、本質が問われる時代になると思います。

能力をさらに上げたAIが、普通に使えるようになる未来社会の中で、今、目の前にいる子供たちは、どのようにそれらの知能と共存し、自らの存在感や思いを達していくのでしょうか。視界不良の中で、教育現場の模索は続きます。


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