【2026年版】60分でわかる!教師のための生成AI校内研修|校務・授業づくりの実践例

0.はじめに

昨年、「60分でわかる!教師のための生成AI速習講座」と題して、学校で生成AIについて校内研修を行う場合の研修案を紹介しました。

その研修案では、ChatGPTなどの生成AIを実際に動かしながら、学級便りの作成、アンケートの分析、記述式回答の添削・採点、さらには音声を使った活用などを、60分の中で一気に体験する構成としました。

あれから約1年。

生成AIを取り巻く環境は、さらに大きく変わっています。

「生成AIとは何か」「ChatGPTで何ができるのか」という段階から、学校現場でも、

「このAIを、実際の校務や授業づくりの中でどう使うのか」

を考える段階へ入ったように感じています。

そこで今回は、2026年7月に知内町「学びセミナー」で行った「生成AIの基本と教育における活用の可能性について」という60分の研修をもとに、進化するAIの「今」を受けた、新しい校内研修案をまとめてみたいと思います。

今回のキーワードは、次の3つです。

一つ一つの仕事を助けるAI

複数の資料をつないで考えるAI

教師の専門性を補助し、拡張するAI

この3段階から生成AIを捉えてみると、今後の学校でのAI活用の姿が分かりやすく見えてきます。

1.60分の研修をいくつかの段階で構成する

前回の研修では、とにかく生成AIを実際に触ってもらうことを重視しました。

今回は、そこから一歩進めます。

研修全体を、おおよそ次のような段階の流れで構成します。

前半10分 生成AIによって何が変わり始めているのか

ChatGPT登場以降の変化、生成AIとは何か、そして現在のAIがどこまで進んでいるのかを実例で簡潔に紹介します。

10~25分 一つ一つの仕事を助けるAI

導入としてわかりやすい、学級便りの作成や保護者アンケートの分析など、先生方が日常的に行っている仕事にAIを利用してみます。

25~40分 複数の資料をつないで考えるAI

今話題のGemini Notebookを使って、複数の資料から必要な情報を探したり、授業づくりに活用したりする方法を紹介します。

40~50分 教師の専門性を補助・拡張するAI

記述式回答の添削・採点や、特定の教科・領域に特化したAIなど、先端の事例を紹介し、APIやRAGというAIを使うときの背後にある仕組みに触れます。

50~60分 生成AIとともにつくる学校の未来

児童生徒によるAI利用、AI時代の教師の役割、利用上の注意点を確認しこれからの学校について考えます。

60分でAIのすべてを理解することは内容が膨大で到底叶いません。大切なのは、細かな操作をたくさん覚えることではなく、

「自分の仕事なら、どこにAIを使えるだろう」

と考えることができるようになることが大切です。

今回の記事には、読者が興味を持った内容をさらに深掘りできるように、スライドにQRコードを埋め込み、さらに詳しい資料を閲覧したり、実際に試してみたりできるようにしています。

今回の本記事で、もし興味を持ったAIの活用方法などがありましたら、ぜひ深掘りに役立ててください。

2.AIの現在の実力は

研修の最初では、生成AIの歴史を長々と説明するよりも、

「今のAIは、こんなことができるようになっています」

という場面を一つ見てもらった方が効果的です。

今回の研修では、学校の年度当初に示される「学校経営計画」を使いました。

これをGemini Notebook(旧NotebookLM)に読み込ませ、資料の内容を音声で解説させます。

しかも、単に文章を読み上げるのではありません。

資料全体を読み取り、その学校が何を大切にしようとしているのかを整理し、背景となる言葉なども補足しながら、二人の話者による会話形式の解説をつくります。

数ページのPDFから、ここまで内容を読み取って説明できる。このデモを見るだけでも、

「今の生成AIは、単に質問に答えるだけのものではない」

ということを感じてもらえると思います。

3.一つ一つの仕事を助けるAI

ここから実際の活用に入ります。

最初の切り口は、

「一つ一つの仕事を助けるAI」

です。

生成AIが特に得意なのは、文章を読んだり、書いたり、整理したりする仕事です。

例えば、学級便りづくりです。

「中学校3年生の担任です。1学期最後の学級便りを600字程度で作ってください」

と指示するだけでも文章はできます。

しかし、それだけでは一般的な文章になってしまいます。そこで、

「最後の中体連で〇〇部が大活躍だったこと」

「修学旅行では〇〇さんや、〇〇君が実行委員として活動したこと」

「2学期には学校祭と進路への取組が本格化すること」

など、実際に学級であった出来事や予定を加えていきます。すると、その学級らしい文章へと変化していきます。

生成AIに対するこうした指示をプロンプトと呼びます。私は研修の中で、

「余り仕事のことが分かっていない大学生に、仕事を頼むくらいのつもりで、プロンプトは書いてください」

と説明しました。

目的、分量、読み手、入れてほしい内容、文章の雰囲気……。使う側がAIに丁寧に伝えれば伝えるほど、AIからの回答もこちらの意図に近づいてきます。

PTAアンケートの分析に利用する

文章を扱う能力は、文章を「書く」だけではありません。

たくさんの文章を「読む」仕事にも大きな力を発揮します。

例えば、保護者アンケートです。

自由記述が100件、200件と集まると、すべてに目を通して意見を分類するだけでも大変な作業になります。

そこで、自由記述の中に個人が特定できる情報が含まれていないことを確認した上で、

「次の文章から、外泊について保護者の持つ意見はどのように分類されますか?分類を箇条書きにしてください」

とAIに依頼します。

すると、「賛成・反対」という単純な分類だけではなく、

「どのような条件なら認めてもよいと考えているのか」

「保護者が共通して心配していることは何か」

といった論点まで整理できるまとめが出力されます。

こうした文章の作成・要約・分類は、生成AIと非常に相性のよい仕事です。

さらに、Word、PDF、Excelなどのファイルをそのまま扱えるAIも増えてきました。まずは、現在行っている仕事の一部分にAIを加えてみる。

ここが学校でAI活用を始める一番取り組みやすい最初の場所だと思います。

4.複数の資料をつないで考えるAI ― Gemini Notebook

二つ目は、

「複数の資料をつないで考えるAI」

です。

ここで利用するのがGoogleの**Gemini Notebook(旧NotebookLM)**です。

普通の生成AIは、非常に幅広い知識をもとに回答します。

一方、Gemini Notebookでは、

「この資料を使って考えてください」

という形で、AIが参照する資料をこちら側で指定できます。

例えば、学校で生成AIを児童生徒に使わせたいとします。

そのとき、

「国語の作文指導でAIを使う場合、どんなことに気を付ければよいだろう」

という疑問が生まれるかもしれません。

そこで、

①文部科学省の生成AIに関する資料、

②教育委員会から出されている通知、

③利用するAIサービスの規約、

④校内で定めたルール 

などをGemini Notebookに入れておきます。そして、

「作文指導で生成AIを利用するときの注意点を教えてください」

とGemini Notebookに質問をします。

すると、登録した資料を根拠として、Gemmini Notebook は回答を組み立ててくれます。

一般的なチャット型のAIに尋ねる場合と比べて、どの資料を根拠にしているのか確認しやすいところが Gemini Notebook の大きな特徴です。

もちろんこれも一種のAIですから、回答をそのまま信じるのではなく、最後は人間が元資料を確認する必要があるとされています。しかし、

「必要な資料を集めておき、その資料についてAIに相談する」

という使い方は、回答の根拠もしっかりとしており、学校の業務と非常に相性がよいと感じています。

5.Gemini Notebook(旧NotebookLM)で指導案をつくる

この仕組みを授業づくりにも使ってみましょう。

学習指導案を作成するとき、先生は一つの資料だけでなく複数の資料を参考にして作っています。

①学習指導要領や学習指導要領解説、

②教科書会社から提供されている年間指導計画、

③教科書の当該ページ

④教科書会社や教委から出ている評価規準、

⑤学校の今年の研究主題、

⑥過去の指導案……。

様々な資料を行き来しながら、一つの授業を組み立てています。

それならば、その資料群をGemini Notebookに入れて指導案がつくれないだろうか…。

今回は、中学校第1学年数学の「立体の表面積」を例として作成に挑戦しました。

必要な資料をGemini Notebook に入れ、

「50分の授業として学習指導案を作成してください」

と指示します。

すると、単元の指導観や指導目標、指導計画に加えて、本時の目標や本時の展開をからなる学習指導案を作成することができました。(注:Gemini からは文字だけが返ってくるので、指導案の枠の中に納めたり、本時の展開部分で図を入れたりという作業は、私が手動で行いました)

また、それをもとにした板書計画もインフォグラフィクスで作成することができました。

もちろん、この指導案でそのままで授業ができる完成品ではありません。とくに本時の50分の流れを考える部分では、本当にこの流れで大丈夫と不安になるところも多々ありました。

しかし、これまでは難しかった、単元の指導観や指導目標、時数配分などの部分は十分実用に耐えるレベルになっていると感じました。

AIは、実際の生徒の姿も、学級の雰囲気も、前時までの学習状況も分かりません。さらに言えば、その年代の30数人の集団を教えた経験もAIにはありません。

だからこそ最後に必要になるのが、先生の専門性です。AIが作成した指導案をたたき台として、

「この学級ならここを変えよう」

「この発問では子どもの考えが出てこないから、こう言い換えよう」

「ここではもう少し考える時間が必要だ」

と現場を知る先生が修正していく。

この使い方であれば、指導案づくりに要する時間を軽減しながら、教師が本当に考えるべき部分に時間を使うことができる可能性が広がってきます。

6.教師の専門性を補助し、拡張するAI

三つ目が、

「教師の専門性を補助し、拡張するAI」

です。

今回の研修のこのセクションでは、二つの先端事例を紹介しました。

記述式回答を添削・採点するGSA

一つは、記述式回答やレポートの添削・採点をAIで支援する仕組みです。

生徒や学生の記述をExcelに並べ、一人一人の回答を同じ基準のプロンプトでAIに読ませ、アドバイス文を作ったり、5段階でどの位かなどを判定します。

大切なのは、

「AIに採点を任せてしまう」

ということではありません。

まず最初に、

「この観点を重視する」

「この内容まで書けていればこの程度の評価」

「この表現では、ここを指摘する」

といった採点基準をAIへの指示として作成します。

この部分は、まさに担当する先生の専門性が必要です。AIが教師の代わりになるのではなく、

教師の持っている専門性をAIにプロンプトを介して与えることで、その専門性を生徒の書いた多くの回答に適用する

という考え方です。

こうしたAIをアプリケーションから利用するときに使われる仕組みの一つが**API(エーピーアイ)**というものです。

今後、教育現場でも様々なAIを使ったアプリが登場してくることでしょう。

その裏側では、このAPIを使ってAIとデータをやり取りする仕組みが広く使われています。AIを少し高度に活用する際には、必ず使われている代表的な仕組みの一つです。

細かいプログラム上の仕組みはさておいて、どのような仕組みでAIが動いているのかを伝え、将来のアプリの理解に繋げていくことが狙いです。

「数学AI先生」とRAG

もう一つ紹介したのが「数学AI先生」です。

このAIは、数学の問題を質問すると、単に答えを示すだけではなく、生徒の在籍する学年や学習内容、理解の状況などに合わせて説明することを目指して作りました。

ここで使われる重要な考え方が**RAG(ラグ)**です。

RAGとは、簡単にいえば、AIが自分の持っている知識だけですぐに答えるのではなく、必要な資料を探し、その資料を参考にしながら回答をつくる仕組みです。

「数学AI先生」では、人間の先生が数学を教えるときに使っている数学的な考え方や概念、表には見えにくい指導上の配慮、さらに、生徒の状況に応じた声かけや支援の仕方などを、あらかじめ資料としてデータベースに蓄積しています。

そして、生徒から質問を受けると、その質問に関係する資料をデータベースから探し出し、その内容をAIに渡して、生徒に分かりやすい説明をつくりだします。

仕組みを順番に整理すると、次のようになります。

①「AI先生」が生徒から質問を受ける。

②質問の内容に応じて、関連する教材や数学的な考え方、指導方法などの資料をデータベースから探す。

③見つけた資料を、回答を考えるための参考情報としてAIに渡す。

④AIがその資料を参考にしながら、生徒の学年や理解の状況に合った説明や助言をつくる。

このように、「まず必要な資料を探し、その資料を根拠としてAIに回答をつくらせる」仕組みをRAGといい、それを具体化した一例が「数学AI先生」です。

大切なのは、単に数学の知識をデータベースに入れているだけではないという点です。例えば、

「この問題では、すぐに公式を教えず、まず図を描かせた方がよい」

「この段階の生徒には、専門的な言葉を使わずに説明した方がよい」

「答えを直接教えるのではなく、次に考えるためのヒントを与える」

といった、教師が授業の中で経験的に行っている指導上の工夫や配慮も資料として蓄積しておくことができます。

そのため、「数学AI先生」は、単に数学の問題を解くAIではなく、人間の先生が持っている指導の知恵を参考にしながら、生徒へのわかりやすい説明を考え、伝えるAIを目指しています。

実はGemini Notebookも、資料を根拠として回答を作るという点では、RAGに近い考え方を利用しています。

今後、学校で使われるAIは、「何でも知っている一つの巨大なAI」だけではなく、

「数学に詳しいAI」「道徳の授業づくりに詳しいAI」「校内規程に詳しいAI」

といった、特定の用途に特化したAIが学校の中でも利用が増えていくのではないかと考えています。

そのとき重要になるのは、AIそのものの性能だけではありません。

「AIに、どのような資料や専門的な知見を与えるのか」

という部分に、教師や専門家の知識と経験がますます重要になってくるのだと思います。

7.Plus AIからWith AIへ

研修の最後に、私は学校でのAI活用を二つの段階に分けて考えてみました。

最初の段階は、

Plus AI

です。

今まで行っていた仕事にAIを「足す」。

学級便りを書くときに使ってみる。

アンケートを整理するときに使ってみる。

指導案を考えるときに使ってみる。

まずはこれで十分です。

そしてAIを使うことが特別ではなくなってきたとき、次の段階が見えてきます。

それが、

With AI

です。

AIを使うことを前提として、仕事の進め方や授業そのものを考え直してみる。

例えば、

「AIで指導案を早く作る」

だけではなく、

「AIが指導案のたたき台を作ることを前提にすれば、先生はどこに時間を使うべきか」

と考える。

「子どもがAIに作文を任せきりにしないためにはどうするか」

だけではなく、

「AIが存在する社会で、子どもにどんな文章を書く力を身に付けさせる必要があるのか」

と考える。

そこまで進んだとき、学校教育そのものが少しずつ変わり始めるのだと思います。

8.児童生徒は生成AIをどう使うのか

生成AIは、先生だけが利用するものではありません。

児童生徒も、これから様々な場面でAIを使うことになります。

特に、

言葉を通して調べたり考えたりする場面、

複数の資料から考えを広げたり絞り込んだりする場面、

発表資料のイラストやポスターなどを作成する場面、

これまでの学習を振り返り、自分の考えを整理・修正する場面などでは、大きな力を発揮するでしょう。

一方で、

「AIが作ったものをそのまま提出する」

だけになってしまえば、学習とは呼べません。

だからこそ、

何をAIに任せ、何を自分で考えるのか

を判断する力が、これまで以上に必要になります。

9.AIが普及するほど、教師の専門性は重要になる

生成AIがこれだけ急速に発達すると、

「将来、先生はいらなくなるのではないか」

という話を耳にすることがあります。

私は、むしろ逆なのではないかと思っています。

AIが作った指導案が本当にこの学級に適しているか判断する。

AIが添削した内容が、その子の学習状況から考えて適切かを考える。

子どもがAIとの対話に頼りすぎていないか気を配る。

AIでは分からない、その日の子どもの表情や教室の空気を読み取る。

これらは、我々人間の教師だからこそできる仕事です。

AIが様々な作業を先生の代わりにできるようになるほど、

「何をAIに任せ、何を人間が担うのかを判断する教師の専門性」

が、これまで以上に重要になるのです。

10.研修の最後では、必ず留意点を扱う

生成AIの校内研修では、できることばかりを紹介して終わらないことも大切です。

①個人情報や機密情報をAIに安易に入力しない。

②AIの回答には誤りが含まれることがある。

③著作権に注意する。

④児童生徒に利用させる場合には、年齢やサービスの利用規約を確認する。

⑤AIの回答を鵜呑みにせず、根拠を確認する。

そして私が、今後、特に大切になると考えているのが、

⑥AIとの適切な距離の取り方

です。

生成AIは、人間のように共感的な言葉を返すことがあります。

だからこそ、児童生徒には、

「AIは人間ではない」

「大切なことや深刻な悩みは、信頼できる大人に相談する」

ということも含めて教えていく必要があります。

「使わせるか、使わせないか」だけで議論する時代から、

「どうすれば安全に、主体的に使えるのかを教える」

時代へ移りつつあるのです。

11.60分の研修で目指したいこと

前回に続いて、今回も60分の校内研修案として考えてみました。

生成AIはあまりにも変化が速く、活用も様々な業務に広がり続けており、限られた時間の研修では、そのすべてを理解することはとても難しいと思います。

新しい機能を一つ覚えても、数か月後にはもっと便利な機能が登場しているかもしれません。

だからこそ、「このボタンを押せばこうなる」という操作方法だけを学ぶ研修ではなく、

「生成AIとはどのような特徴を持った道具なのか」

「自分の仕事のどこに使えるのか」

「AIが存在することを前提に、授業や仕事をどう変えていくのか」

を考える研修にすることが大切です。

一つ一つの仕事を助けるAI。

複数の資料をつないで考えるAI。

そして、教師の専門性を補助し、拡張するAI。

まずは、現在の仕事に少しだけAIを足すPlus AIから。

やがてAIとともに仕事や学びの形そのものを考えるWith AIへ。

生成AIを「先生の代わり」にするのではなく、

先生が、より先生らしい仕事に力を注ぐための道具として使う。

そんなAIの活用が、これからの学校では大切になるのです。

函館大谷短期大学ビジネス情報科 奥崎 敏之

コメント

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